社内で「登壇勉強会」が開催されたので、「登壇は最強の生存戦略である」という登壇をしました
事業開発部の塩谷 (@kwappa) です。
タイトルがすべてなのですが、社内で「登壇勉強会」が開催されたので、「登壇は最強の生存戦略である」というタイトルで登壇しました。
といってもコロナウイルスの感染拡大対策が強化されたばかりですから、勉強会はオンラインで開催されました。登壇者3名はオフィスの会議室で交互にしゃべり、参加者はみんなHangouts meetを通して聞く、というスタイルです。
登壇者はクラスメソッドから先日のデブサミ2020に登壇した、AWS事業本部の濱田孝治とCX事業本部の藤村新、それにぼくの3名です。三者三様の登壇にかける思いやノウハウがぶつかりあう、大変おもしろいイベントになりました。オンラインでの参加者は2時間弱のあいだ常に100人前後をキープしていたので、飽きずに楽しんでもらえたのではないかと思っています。
ぼくはスライドを作り込む余裕がなかったので、テキスト少なめトーク多めのセッションになりました。自分へのログとして、また登場人物への感謝の気持ちとして、フォローの記事を残しておこうと思います。
スライド
話したこと
スライドに沿って話したことの概要を書いていきます。見出しの数字はスライドのページ番号です。
ちなみに、事前にアジェンダとして
- 人生を変えた登壇
- 登壇機会の作り方
- 登壇内容のストーリーの作り方
- 秘伝のスライドテンプレート
- 聴衆をつかんではなさない話し方、動き方
という5項目を登壇者で決めていたのですが、全然アジェンダに沿わずに作ってしまいました。内容としては全部含めているはずなので、読み取っていただければ幸いです。
01 : Attention
カンファレンスで聴衆がスライドをスマートフォンで撮影するときのシャッター音については以前から問題になっていました。スライドは公開されることが大半なので、メモのための撮影は不要な場合がほとんどです。クラスメソッドでは社内で共通して使われているスライドテンプレートにこういう注意喚起の1枚があります(文言は少しいじっています)。
また、スライドの1枚目になにか無関係のページを作っておくのは、スクリーンへの接続テストのときにも有効だと思っています。以前はよくカラーバーの画像を使っていました。セッションタイトルを事前に告知したものと変更してしまった場合(まれによくある)、ネタバレを防止して導入をやりやすくする効果もあります。
03 : こんにちは!
セッションが行われる時間帯によって「おはようございます」や「こんばんは」に変えることもあります。
自分でも失敗のしようがない一言から入ることでリラックスできますし、聴衆に声を出してもらうことでその後のリアクションを引き出しやすくなるように思っています。
会場の声が小さい時は耳に手を当てて「もう1回」のジェスチャーをする、というのをアイスブレイクの持ちネタに使っています。おつきあいただいたことがある方、ありがとうございます。実は少しだけ、ハルク・ホーガン(プロレスラー)のポーズをリスペクトしています。
08 : ぼくと登壇とコミュニティ
GLTの思い出
初めて登壇したのは、Genesis Lightning TalksというコミュニティでのLT(Lightning Talks)でした。このコミュニティは参加者全員がLTで登壇するというスタイルで運営され、2008年の10月からおよそ4年間、1か月に1度程度開催されていました。
縁があって初回からほぼ皆勤賞で参加したので、結果的に月イチでLT登壇をしていた、ということになります。それだけ数をこなしたのはとてもいい訓練になり、人前で喋ることへの抵抗や緊張をコントロールできるようになりました。
企業がコミュニティイベントに会場提供をすることは、今やすっかり普通になりました。その先駆けがGLTに会場提供してくれた日本オラクルで、そのころ会場提供を担当してくれていたのが、現在クラスメソッドのデータアナリティクス事業本部に在籍している甲木です。IT業界の人間関係はいろんなところでつながっていることから「セマギョー」(狭い業界の略)などと言ったりしますが、こんなところにもセマギョー案件があったのでした。
まずはLTより始めよ
LT(Lightning Talks)とは本来、5分間で行うプレゼンテーションです。発祥や意図はShibuya Perl MongersのWhat are Lightning Talks?にまとまっているので、ぜひご一読ください。
「喋る方も聞く方も5分がんばればいい」というのが本来の意図なので、登壇をよりカジュアルにするための発表スタイルとして考案されたものです。実は5分間できっちり喋るのは結構難しいのですが、「11個のトークがすべて、わあわあとわめきちらすものだったら、わたしはとっても幸せです。」とあるぐらいですからきっちりしている必要もないですし、熱が入りすぎた結果5分が過ぎてしまい、まだ喋りたそうなスピーカーをあとでつかまえて続きを聞く、なんていうのも面白いものです。
カンファレンスや勉強会で「LT枠」が設けられることも多いので、登壇に興味はあるがとても自分には…と尻込みしている方は、まずLTから挑戦してみるとよいでしょう。
スピーカー特権
LTであっても立派な「スピーカー」ですから、そのあとの会場や懇親会で話しかけられる機会もグッと増えます。見知らぬ人に話しかけて打ち解けるのが苦手な方は(ぼくもです)、登壇することで「こっちから話しかけなくてもすむ」という特権を手に入れてみてください。
10 : 登壇機会を得るために
自重せずに手を挙げる
コミュニティイベントやカンファレンスに参加する時は、まず登壇者としての応募を考えるのがポイントです。テーマに合わないとか枠がないとかの理由で断られることもありますが、それは「ダメ」なのではなく「今回はミスマッチ」だっただけなので、そうであれば気にせず聴衆として参加すればいいのです。
前述したように、LT枠からでも「登壇者」として参加することで、コミュニティイベントは単なる聴衆でいるよりずっと楽しく、また意義深いものになります。
登壇が登壇機会を産む
そうして自重せずに登壇することでだんだんと「登壇者」としてのプレゼンスが高まり、登壇の依頼が来るようになるかもしれません。そうしたらしめたもの、「誰の挑戦でも受ける」と公言し、可能な限り引受けていきましょう。
なにしろ昨年のDevelopers.IO Tokyo 2019での登壇は、入社前からアテにされていたんだそうです。入社初日に飲みに行ったその席で「登壇決まってるからセッションタイトルと概要を明日までにください」と言われて、あわてて決めたのが『3つの「Re」〜ソフトウェアの信頼性を高めるためにぼくたちができること〜』だったのでした。
登壇は最強の生存戦略である
そうして登壇回数を増やすことが、ぼくにとっては重要な生存戦略でした。たとえば、2014年に出版された「Web制作者のためのGitHubの教科書」を執筆することになったのは、「みんなでGitHub勉強するにゃんっ!」というイベントで1セッション担当したのがきっかけでした。そしてこのイベントでセッションを担当することになったのは、「Git道場」というイベントの運営を手伝ったのがきっかけでした。
つまり、運営を手伝ったら登壇依頼が来て、登壇したら執筆依頼が来て、結果としてAmazonに著者ページを持つことができた、というわけです。
別に著者ページを持ったからって生存できるわけではないのですが、フリーランスエンジニアが住宅ローンを組むとき、著作があることが社会的信用を後押ししてくれたりもするそうです。これはRuby / Railsのコミッターである松田明さんの大江戸Ruby会議04でのセッションで聴いた話で、ずっと印象に残っています。
12 : 最高の登壇をお見せしますよ
ずいぶん大きく出た章タイトルでちょっと恥ずかしいのですが、登壇するとき気をつけていること、心がけていることをまとめています。
ストーリーの重ね方
まず、その登壇の目的をはっきりさせます。技術の伝達なのか、採用なのか、レピュテーション向上なのか、エモをぶつけたいのか。その目的とイベントの趣旨を並べて考えていると、だんだんとメインテーマが見えてきます。そのメインテーマに向けて各論を構築していきます。
アプローチとしてはメインテーマを細かく分解していくトップダウン方式と、細かい要素を組み立ててメインテーマを構築していくボトムダウン方式があります。どちらが適切かはセッションの長さにも影響されるので一概には言えませんが、テクニカルな話はトップダウン、エモがメインの話はボトムアップのほうがやりやすいように思います。
スライドのまとめ方
スライドテンプレートはToolbox for Keynoteから気分で選んでいました。昨年クラスメソッドに入社してからは、会社オフィシャルのものがかなり使いやすいので、少しずつアレンジしながら作っています。
わりと文字が多めで、ストックフォトなどはだんだん使わなくなってきました。オシャレなやつを作るのは苦手なので、デザインについてはあまりアドバイスできることはありません。
意識しているのは部・章・節・項・目というツリー構造を崩さないようにすることと、要素をできるだけ3つにすることです。「理由は3つあります」式の作文術にちなんだもので、よくある手ではありますがリズムは作りやすくなるように思います。
プレゼンの魅せ方
登壇勉強会でおもしろかったのは、トップバッターの濱田は「きっちりリハーサルしてなんぼ」だったのに対して、次の藤村は「リハなんてしません!」と言い切ったことでした。ぼくは「不安をなくすためのリハ」だと思っているので、不安があればやればいいし、不安がないところまで馴染んできたら「よっしゃ飲みにいくか」という気分になります。
とはいえ時間を過ぎてしまうのは(どんなにいいセッションでも)印象悪いですし、大幅に残ってしまうと悔いが残りがちなので、ある程度時間をコントロールできそうな見通しが立つまでは、スライドをめくりながら脳内で(状況が許せば声を出して)喋ってみる、ということはしています。ぼくの場合は余裕がなくなると早口になる傾向があるので、時間の感覚がつかめていれば意識してゆっくり喋ることができます。そしてゆっくり喋ったときのほうが、どうも評判がいいようです。
また、スライドを送るためのプレゼンターを「感情を伝える道具」として使うことも意識しています。大事なスライドの前にちょっとタメを作ってから大仰にボタンを押すとか、プレゼンターを持った手でスクリーンを指しながらボタンを押すとか、PCのキーボードではできない表現を可能にしてくれます。
以前は黒曜石を使っていたのですが、しばらく登壇から遠ざかっていたら静かに壊れてしまっていたので、ちょっと奮発してSpotlightを導入しました。
プレゼン送りに感情を込めるのはDevLOVEの市谷聡啓さんを意識しています。彼のスライドは素晴らしいエモに満ちているのですが、それを情感たっぷりに送ることでさらに魅力あるプレゼンになっているんじゃないかと思っています。
15 : One More Thing
これは単に「なんとなくかっこいいから言いたいだけ」で入れている…のではなく、それなりに意図があってやっています。
まず重要なのは、時間のバッファとして使えること。しっかりリハしたつもりでも時間はずれることがありますし、自分の手元のタイマーと会場のタイムキーピングがずれていることもままあります。「喋らなくても成立するが喋ると少し面白さが増す」という要素を入れておくことで、時間が足りなければサッと流して終了できますし、時間が余りそうならゆっくり喋るネタになります。
あくまでもおまけですから、「スライドだけ見てもなんだかわからない」ような内容にしておくことで、その場で聴いてくれた方へのボーナスにすることもできます。
「自分へのご褒美」というのは…こじつけですね。「要素を3つにする」ための穴埋めで考えました。最後に自分が楽しんで話せることがあるからそこまで頑張ろう、というモチベーションの源泉になるのでは?という意味ですが、そんなものなくても毎回モチベーションを持って喋ってるつもりです。
でも、目黒雅叙園のスクリーンにサウナの画像を映したときは、とてもいい気分になりました。もしかしたらちょっとととのっていたかもしれません。
おわりに
登壇は準備がなかなか大変ですが、リターンも大きいのでアウトプットの形としてオススメです。機会があったら挑戦してみてください。きっと楽しいし、キャリアにとってもプラスになるはずです。
なお、部署内向けの登壇機会を週イチで設けている我々事業開発部では、EC / CRMプラットフォーム「prismatix」を一緒に育てていく新しい仲間を求めています。Javaによるクラウドネイティブなマイクロサービスの開発に興味があるソフトウェアエンジニアの方、そのアプリケーションの運用とSREに興味のあるインフラエンジニアの方、そのサービスを顧客企業に導入していくプロジェクトマネジメントに興味がある方(SIerでのPM、SaaSやパッケージ製品のプリセールス、小売 / EC業界でのシステム開発などの経験が活かせます)、一度お話ししませんか?オンラインでも参加可能な会社説明会などでお待ちしております!